読書

 暴走族のエスノグラフィーを読んだ。JC読書会で話題になっていた本。いつもタイミングが悪く貸し出し中だったが運良く借りられた。
 初版が84年で借りたのは94年に増刷された4刷。自分が年頃のときには暴走族は消えかけだったけれど、それっぽくしている人が先輩でまだいた。気をつかってくれたり、優しかった記憶が残っている。ただ、自分の学年では絶滅していたし、その後の学年でも見ていない。
 暴走族や若者論などは落としどころが決まっていることが多い。けれど本書を読むと、しっかり分析していると一般的にいかに落としやすい議論で終わらせているかがよくわかる。そこから脱却する為に必要なのは複雑な構造をほぐす作業と正確な分析作業。うやむやにせず、どこまで執着できるかか。
 原因や理由を知りたがるのは解釈可能な範囲にとどめておきたい欲求があるから。でも、安易に求めず周辺を回ることがすごく重要なんだ。科学的に証明できるものはその“切れ味”のよさに感嘆してしまうが、慣れてしまうとすべての物事には答えがあるように誤解をしてしまう。
 「物事が多面的だ」と案外簡単に口にできてしまうけれど、それを詳細に記述、分析できているのか。多面的に見るためにはひとつの方法では限界があって、意識してパラメーターを増やすことが必要なんだ。ひとつひとつを動かしてみて、多くの事象を並列に並べてる作業ができるか。
 単純な思考回路しかつくれなかった自分には、なんと足りないことが多いことか。参った。