エイプリルフール

 駅前で宗教?団体がビラ配りしていた。といっても配っていたのは5歳くらいの男の子ひとりだけで、大人は今の世相があーだこーだ言ってアピールしているだけ。こども独特なアンバランスな歩き方で近くによってきたその子は「お願いします」と元気よくビラを渡そうとする。疑うことを知らないようなまなざし。けれど、期待を裏切って受け取りを拒否するようにそのまま無言で通りすぎた。吐き出したいような嫌悪感を抱えていた。
 気づくと声が止んでいた。

 10数メートル進んで振り返る。こちらを見ながら立ちすくんでいる彼。引導を渡したようで気分は最悪。歩きながらどうすればよかったのかあれこれ考え続けたが、わかったのは自分の中の悪魔。それでも、せめて親も一緒にビラを配れと思う。楽しいウソもない、きつい4月1日。