先週は所用で新潟。都内では桜がちらほら咲き始めたところだったが、越後では朝起きると積雪5センチ。トンネルを抜けなくとも往路と復路で景色がまるでかわる。湯沢付近でリフトを動かしているスキー場はなく、降りたわけではないが閑散とした様子にみえた。苗場プリンスが期間営業することになった。バブルがはじけてももちこたえていたのだが、ここまでか。
 芹沢一也氏の『暴走するセキュリティ』を読む。治安危機意識の高まりと、ともに進む対処療法と厳罰化の流れが、「安心」をもたらすことなく弊害を生じさせていることに警笛をならす重要な一冊。ではあるのだが、殺人件数や犯罪認知件数などをみれば、「安全神話」が崩壊していないことは明らかであっても、データを含めた解釈そのものが受け入れられない現状を考えると、 芹沢氏が『論座』で行った藤井誠二氏との対談で厳罰化の流れへの対抗を「はっきりいって負け戦です(笑)」。と述べていたように、どう抗えればいいのか改めて考え込んでしまう。
 「死刑」にはやむ終えないとする藤井誠二氏の『厳罰化は悪いことなのか』には、本人の反問がダイレクトに述べられていて、逆にこちらのほうが死刑を背負う「覚悟」と重たい「何か」が、行間からじっとりとにじみでてくるようで、表層で「厳罰化」と騒いでいる人には、その「覚悟」を迫るぶん怖いものになっているかもしれない。逆説的にだが、もしかしたらこちらが効果的だったりして!?。
 最後に納められている萱野氏との対談では、萱野氏が市民的権力と国家権力との関わりを踏まえて、芹沢氏の考えを考察していて非常に興味深い。内輪の論理でなく適度な距離感で議論している様子に脱帽。

暴走するセキュリティ (新書y)

暴走するセキュリティ (新書y)

重罰化は悪いことなのか 罪と罰をめぐる対話

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