コダクローム

 ナショナルジオグラフィックの記事でコダクロームの製造が中止されたことを知る。
製造中止、コダクロームが残したもの(National Geographic)
僕が恋人よりもカメラと親密だったときに、一度だけ試したこのフィルムは、当時に流行していた(今も?)高いコントラストで発色性の強いフィルムたちと一線を画していた。コントラストと発色を控えた、おそらく見た目に「近い」色合いを表現していたフィルムだったけれど、感度の低さと現像の様式の違いからフィルムと現像料金が高く、納期にも時間がかかったのでそれ以降は利用することはなかった。その後、現像所が一括され、さらに納期が延びたと記憶している。
 地雷を踏み、帰らぬ人になったロバート・キャパが最後に写した写真は、ニコンS2に装填されていたのはコダクロームでとられたものだった(はず)。カメラではライカやハッセル、コンタックスと名器にことかかないけれど、カラーフィルムでは最初で最後の名品になるのだろうか。
 につまった気分転換に、福岡伸一『できそここないの男たち』を読んだ。ベストセラーだったし、なんとなく内容は予想がついていたこともあり、遠ざけていたもの。いやーさすがにうまいのは文章だけではなく、生物学的説明と物語のつなぎかたに舌をまく。理系科学者としては最近はタレントとしても「認定]」!?されている(くわしくはウィキにて)茂木健一郎福岡伸一は二大巨頭といったところか。話方や文章も対照的なお二方。疾走感のある茂木氏の文章は読んでいて気持ちがいいし、福岡氏は落ち着いて描写し、それこそ僕の脳を刺激してクオリアを生じさせる。これほど、陰鬱な研究生活を描く先生もまれだとは思うけれど。