『SiCKO』

 9.11だというのにTVではほとんど過去を扱っていない。NYの式典を少し流すくらい。台風で流れてきた材木のほうが幅をきかせている。テロ特租法を考える意味でも振り返ってもよいのにな。さて、9・11だから最近見た映画から。
 『華氏911』でブッシュを喜(悲!?)劇役者に育てたマイケル・ムーアが新作『SiCKO』では国の医療保険なきアメリカ社会に噛み付いた。とはいえ「噛み返されて致命傷を負わなければいいが・・・・・・」とは終了直後の感想。その鍵は“薬局"にあった。
 最先進国のアメリカでは多くの人が病気にかかろうが怪我をして治療を受けることができない。その答えは単純明快。治療にかけるお金がないのだ。収入が少ない人は医療保険に加入できない。治療費は当然のことながら全額患者が負担することになる。切断された指の修復に提示された金額は○○万ドル。落とした指は一本しか治療できなかった。幸福にも民間の会社が独占している医療保険に加入できたとしても状況は大して変わらない。不適当な理由をつけて患者に治療費を払わないからだ。たとえ、それが9・11の救助活動に参加して体調を崩したひとでも・・・。これは詐欺だ。そういえば日本でも保険会社の不払いが明らかになったっけ。
生保不払い284億円、3大疾病特約など25万件 YOMIURI ONLINE

 憤慨したムーアは国の医療保障制度があるお隣のカナダやお友達のイギリス、馬が合わないフランスを取材し羨望のまなざしで見つめるようになった。とはいえ、国の介入に社会主義化を重ね合わせ、アレルギーを発症するアメリカでは強い反対が存在する。そこで、ムーアは母国で救われない患者をキューバに連れて行く。低負担で検査、治療を施され敵国キューバに対する印象も変わる。感謝している患者たち。そこでは安心な国“キューバ”が演出されムーアのアメリ医療保険批判は終わり近かづくのだが・・・。
 さて、問題の“薬局”はキューバでの出来事。近くの?薬局を訪ねるとアメリカから来た患者の薬が低価格で販売されていた。それは良かったのだが、薬局の棚に目をやると薬がほとんどストックされていない。日本でも薬が院外処方になったためほとんどの人が利用したことがあるだろう。そのとき、奥にある棚はスカスカだろうか?『SiCKO』に出てくる先進国の薬局でも棚は薬であふれんばかりだ。この薬量の違いが示唆しているのはなんだろうか?少ない量で十分な医療サービスが成り立つのだろうか?
 確かにキューバの出現でがぜん面白くなるけれれども、過剰な演出が保険確立の足かせにならないだろうか。「キューバの実情は本当は違うのだ。だから保険は民間で」と。
 負担率が上がったとはいえ国民健康保険制度がある日本に感謝しながら、アメリカの心配をしているが余計なお世話だっただろうか。(13日に書き終わり11日としてアップ)