長期脳死

 13日に参議院臓器移植法改正案の採決が行われるもよう。A案が可決されるならば、脳死=人の死として認定され、かつ、拒否の意思表示をしなければ、家族の同意によって、臓器移植が可能となる。また、15歳未満でも同様に家族の同意で提供できるようになる。さらに親族に優先して臓器を提供できるようにもなる。改正A案では、臓器移植の時だけ脳死を人の死として認める現在の法律と同じ定義にしてまま、それ以外の点はA案と同じ。加えて、現行法で運用したまま一年間、子供臨調を設けの検討する合計3案が提出されるようです。僕は、子供臨調案が採択されることを望みますが、採決はA案→改正A案→子供臨調案で行われるようです。次回のJCcastで赤木さんがこの件を扱っていますのでお楽しみに。A案ならば、ドナー拒否カードを持たなくていけません。今ではドナーカードをほとんど見ないし、記入ミスがあればドナーと認めれません。健康保険証や運転免許書に記入欄を設けるという議論もあるようですが、記入ミスもドナーとされちゃうのでしょうか?まいったな。法案が審議中の参院厚生労働委員会で見過ごせないやりとりが行われていたのを生命学者の森岡正博さんのブログで知った。
 問題は、最近もTVメディアで取り上げられいるの(そのうち三例くらいを僕もみた)、長期脳死状態の子どもの判定を巡る問題。無呼吸テストを行った上でも長期に脳死状態の子どもは存在するのに、子どもの長期脳死例は全て無呼吸テストを受けていないから厳密には脳死と違うという見解を石井みどり参議院議員、富岡勉衆議院議員が披瀝していたのだ。
 この長期脳死状態を「厳密にいえば脳死ではない」とみなすような文章は僕も他の場所でみています。東邦大学の相川厚教授が書いた『日本の臓器移植 現役腎移植医のジハード』(河出書房)にもに書かれています。この本では四国・宇和島徳州会病院などで行われた病気腎移植の妥当性を個々の症例を検証していて、医師のインフォームドコンセントや病院の体制など不備も踏まえ、全てのドナーに他の治療を含む選択肢が示されないまま腎臓を摘出されたと記述されていて、非常に興味深く読んだ本だったのです。移植医から「患者のため」を標榜する腎移植の闇についても避けることなく書かれていただけに、長期脳死についての記述を残念に思ったことを覚えています。おすすめの一冊であるには間違いないのですが、正確を期すためにその一文を引用します。

近年、昇圧剤やホルモンの投与により数ヶ月から一年以上心臓が動き続けた例が複数ある、とアメリカの学者が報告していますが、脳死ではない事例や正確な脳死判定を行っていない事例も含まれており、論文の信用性には大いに疑問です。むろん、その患者さんが生還したという報告もありません。